エルディション

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安藤緑山の野菜と果物

今回は、「安藤緑山」の野菜と果物の牙彫作品を紹介します。

「安藤緑山」は、1885年、浅草区花川戸で生まれ、数え9歳の時に父が亡くなり、叔母の家に養子に入った。養父は、金工家の「安藤彌次郎」で、高等小学校卒業後に象牙彫刻を習って独立した。師匠は、「大谷光利」とされ、東京彫工会に所属し、下谷御徒町(現在の台東区西部)に住んでいた。また「緑山乍」銘には、「金田記」「金田」の銘が併記される作品が見られるのは、牙彫家・牙彫商の「金田兼次郎」によって、展覧会等への出品がなされたためである。1943年に、伊勢丹からの依頼で、インドネシアスマトラ島に赴き、現地で牙彫の指導を行った。

牙彫で野菜や果物を中心に多くの作品を制作し、現存している物だけでも50数点以上あり、その中でも「竹の子と梅」は安藤の最高傑作と言われている。

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TV東京「美の巨人 安藤緑山」より

京都三年坂にある私設美術館 「清水三年坂美術館」に、この「竹の子と梅」は所蔵されている。この美術館は、1980年代に「村田理如」が、ニューヨークのアンティークショップで明治時代の印籠と出会ってその魅力に目覚め、精力的に海外から優品を買い戻してコレクションにし、2000年に私設美術館として開館した。

「清水三年坂美術館」には、この他にも「安藤緑山」の作品がある。

1、「三茄子」

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三茄子 「Junaidaと清水三年坂美術館」より

3本の茄子の形状、ひたの状況、さらに薄い葉っぱの形状と、彩色とリアル感がすごい作品である。

2、パイナップル、バナナ

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パイナップル、バナナ 「Junaidaさんと清水三年坂美術館」より

パイナップル、バナナとどれをとっても本物そっくりに彫刻し、彩色を施していてリアル感満載の作品である。

3、松竹梅

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松竹梅 「Junaidaさんと清水三年坂美術館」より

「竹の子と梅」に松ボックリを配置し、異なった題名の「松竹梅」を表現しているが、「竹の子と梅」より柔らかさを感じさせるリアル感のある作品である。

4、蜜柑

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蜜柑 清水三年坂美術館

「蜜柑」という単純な題材にも関わらず、みかんの肌質感と皮をむいているリアル感があり、本物そっくりの作品である。 

※「安藤緑山」の彫刻で最大の特徴は、"色つけ"にある。しかし、主流から外れた制作態度は、異端視され、その高い技巧ほどには評価はなされなかった。弟子を全く取らず、「安藤緑山一代限り」とのポリシーを持っていたために、その技巧は長らく謎とされていた。科学的検知から「X線透視検査」によっては、複数の牙材をネジなどで接合して大作の牙彫を実現していることが分かった。また「蛍光X線分析」によっては、金属を主成分とした無機質系着色料が主に用いられた可能性が高い結果が分かった。更には、「顕微鏡による細部観察」によっては、彫りの段階で細部まで完成させてから着色しており、場合によっては着色後に部分的に彫りや削りを施すことで、素地の白色を露出させる技法を用いているのが見て取れた。

「安藤緑山」の作品は、「京都国立近代美術館」にも所蔵されている。

1、「柿」

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柿 京都国立近代美術館

柿の実の熟した質感と枝のリアル感で本物の柿が枝ごともぎ取った感じが出ている作品である。「清水三年坂美術館」に三個の柿がついている「喜座柿」の作品がある。

2、「仏手柑」

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仏手柑 京都国立近代美術館

「仏手柑」の複雑な形状を本物そっくり表現し、薄い葉っぱを見事に表現した、リアル感のある作品である。「仏手柑」は、仏さまの手に見えるという所からこの名前がついた柑橘類の一種である。

東京国立博物館では、2016年に「根付と置物-象牙彫刻の伝統」展に「高円宮家蔵」の「桜桃」が出展された。

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桜桃 東京国立博物館より

「桜桃」であるのに、どちらかと言えばスモモのような形状にみえるが、「桜桃」のつるが造作が、象牙とは思えないような細さであり、繊細な作品である。

今回は、「美の巨人たち」、「開運!なんでも鑑定団」、「ほぼ日刊イトイ新聞」、「東京国立博物館」他を参考に紹介しました。

 

☆参考

三井記念美術館「超絶技巧!明治工芸の粋」展

   
      安藤緑山の牙彫 三井記念美術館 超絶技巧!明治工芸の粋